どうすれば幻想の中の住人になれるのか?

ここ最近このことばかり考えている。

時々、この人はどうしてこんなに魅力的で、いつも余裕そうなんだろうと思うことがある。何もかも完璧で正しく淀みなく時を過ごしているような気がする。

僕と同じ一日24時間の世界に生きている感じがしない。

これは圧倒的に不平等ではないかと思ってしまう。
一緒に行動していても無駄な動作や言動がなく、お酒を飲んでも顔は赤くならないし、トイレも近くない。縁石につまづくこともなければ、パスモをチャージし忘れていることもない。完璧な人。
一年に一回くらい僕の前に現れ、僕は完全な敗北感に包まれる。

僕はお酒を飲んでいなくてもちょっと緊張するだけですぐに顔が赤くなるし、言いたいことがすぐに浮かんでこないし、声はすぐに掠れるし、言えたとしても噛んでしまう。
お酒は好きだけど飲むと同じようなことしか言えないし、聡明からは程遠い。遠すぎる。

完璧な人などいない。とされているが、「僕」という座標からその人を見た時に、どうしようもなく全てが完璧に見える人はいる。

 

自分で書いた「幻想」という小説の主人公には弱みを一切見せない聡明な友達がいる。主人公はその子に心から憧れていて、無理を言ってその子のお家に泊まりに行く。その友達は腹違いの弟たちに食事を用意しつつ、家でコツコツ勉強していて、その様子を目の当たりにした主人公は、その友達を幻想の中にだけ存在する架空の生物のように感じる。

 

主人公の気持ちと僕自身は一致していて、そういった憧れの友達を小説で書いたが、書いたことで聡明な他者との問題から解放された訳ではない。むしろ、より他者が自分とは決定的に「違う」存在だと気付かされる場面が増える結果になった。

違う存在であること自体は受け入れているつもりなのだけど、でももうちょっと、書くことで何かを得たかった。正直言って僕も幻想の中の住人になりたい。

ミステリアスで特殊な能力を秘めている人だと周囲から思われたい。が、こういった直接的な欲求を動機にしていると、むしろ距離は遠ざかる。

 

有名になりたい。という欲求と、有名になるために必要な行動との間には大きな違いがあるように、AになりたいからAのことを考えればいいというものではない。もっと遠回りしないといけない。じゃあどこに向かって遠回りをすればいいのか、今年になってから全く分からないままでいる。

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